- まずは精神的安定のために習慣的に書く
- 執筆速度向上のために薄く繰り返し書く
- 10周程度で累積文字数が収束して完成する
サムネイル元ネタ https://youtu.be/smbAH2We4OM?t=14
2019年の夏以降はひたすら博士論文を書いていたのですが、とにかく遅筆でいつまでも終わらず「自分は才能が無い人間なんだな」と自己嫌悪に苛まれていました。
ところが今年の1月という終盤も終盤になって、僅かなコツで執筆速度がおよそ3倍になることを発見しました。
現在は執筆も一段落したので、その内容をここにまとめておこうと思います。
まずは精神的安定のために習慣的に書く
まずは前提として、習慣的な執筆を心がけましょう。
自分は有名な書籍『できる研究者の論文生産術』で毎日行うことが推奨されている
- 決まった時間の執筆
- 執筆文字数のスプレッドシートへの記録
と、25分書いて5分休むを繰り返すポモドーロテクニックを併用していました。
こうした習慣化は、気持ちの起伏に関わらず機械的に執筆に向かう状態を作るため (特に長編の論文を書く場合に重要となる) 精神的安定をもたらしてくれます。
執筆速度向上のために薄く繰り返し書く
習慣化は気持ちを大分楽にしてくれましたが、執筆速度が決定的に変わったのは全体を薄く繰り返し書く方式を採用して以降です。
具体例として、2節から成るX章を考えてみましょう。過去の自分は以下の方式で執筆していました。
すなわち、章の最初と最後を埋める→各節の最初と最後を埋める→各段落の最初と最後を埋める→各段落の中身を上から埋める、というプロセスです。完成させてから次のパーツに進むため、これは無駄な長考を生んでいました。
そこで、以下の方式に改めました。
すなわち、章・各節の最初と最後をざっと書いた後に、全体を埋める作業を何周も繰り返すのです (直感的には石膏デッサンのようなイメージ) 。
論文執筆において「まず全体を埋めろ」は良く言われることですが、各段落の最初と最後を書いただけでやった気になってはダメです。初めはメチャクチャな文章でも良いので、中身までしっかり埋めましょう (箇条書きも極力避けたほうが良いと思います) 。
また、何周も繰り返す「全体」の範囲も想定の1,2段階広いものと思ってください。
学位論文ならば章全体 (20ページ前後) を、カンファレンス用の論文ならば論文全体 (2カラムで10ページ前後) を、最初から最後まで一気に駆け抜けます。
*この方式だと締め切り直前に空白部分が残っている事態を防げるため、さらなる精神的安定にも繋がります。時間が許す限り何周もして最後の状態をベストな原稿として提出すれば良い訳です。
10周程度で累積文字数が収束して完成する
あくまで自分の場合ですが、薄く繰り返し書く過程で以下に気付きました。
- 1~3周目頃は1サイクルが12時間以内に終わる
- 4周目あたりから主張に対する先行研究サーベイの穴が見えてくる
- 5周目以降は校正や追加サーベイやらで1サイクルが20時間以内に延びる
- 7周目あたりから英文翻訳ソフトが必要になってくる (英語で書く場合)
- 8周目あたりから累積文字数が増えなくなる
- 9~10周目頃は冗長な部分が削られて累積文字数が減少する
- 10周目あたりで完成に至る
また毎日執筆文字数を記録していたので、累積文字数は量的な比較が可能でした。こちらがその傾向のざっくりとしたまとめです。
つまり段落を上から順に完成させていく場合が線形に増えていくのに対し、薄く繰り返し書く場合は最初に一気に増えその後は収束 (そして最後に少し減少) するのです。
このような傾向が出せれば3倍速で仕上げる作戦は成功と言えるでしょう。
おわりに
薄く繰り返し書く方式は人によっては自明かも知れませんが、遅筆に悩む人がいれば是非意識してみて下さい。
今回は学術論文を例に説明しましたが、分野問わず適用出来る技術だと思います。
*実際このブログ記事もそうやって書きました。